「稲沢市って農業の街じゃないの?」と思っている人は案外多いです。いちじくの産地として知られているのは確かですが、三菱電機・豊田合成・ソニーグループの工場が立地する製造業のエリアでもあります。
名鉄名古屋本線の急行停車駅(稲沢駅・国府宮駅)があり、名古屋駅まで電車で約15分。愛知県内でも通勤しやすいエリアのひとつです。
三菱電機のエレベーター国内主力工場を中心に、自動車部品・電子機器・食品まで業種が分かれているのも稲沢市の特徴です。日勤のみから夜勤手当ありまで勤務スタイルの幅が広く、自分の条件に合わせて仕事を選びやすいエリアといえます。
この記事では、稲沢市の製造業の構造・仕事の選び方・主要企業一覧・向いている人の特徴を整理しました。
稲沢市の製造業を支える産業の柱
稲沢市の製造業は、特定の一業種に偏っていないのが実態です。
エレベーター生産の国内主力工場がある
稲沢市で最も存在感があるのが、三菱電機の稲沢ビルシステム製作所です。国内エレベーター・エスカレーターの主力生産拠点で、工場内には高さ173mの昇降機試験塔「ソラエ」があります。市内を走っていると必ず目に入る巨大な塔で、稲沢の街のランドマークにもなっています。
大規模な本体工場がある、というのは下請けの集積地とは話が違います。雇用の安定という点でも、この違いは見ておく価値があります。
自動車部品・電子機器・食品と業種が多彩
豊田合成の稲沢工場(自動車内外装部品)、ソニーグループM&O稲沢サイト(電子機器)、オリエンタル株式会社(カレー・食品)と、エレベーター以外の産業も根付いています。
「自動車系で夜勤ありでもいいから稼ぎたい」「食品系で日勤だけの仕事を探している」——どちらの条件にも対応できる求人があるのは、求職者にとって選びやすい環境です。
尾張西部の交通インフラ
名古屋高速・国道22号(名岐バイパス)・名鉄名古屋本線が使えるので、名古屋・一宮・岐阜どの方向にも出やすい場所です。物流拠点が複数あるのも、この地域に製造業が集積し続けている理由のひとつです。
稲沢市の製造業が集まるエリア
市内は東西・南北にそれなりの広さがあり、工場の立地はかなり分散しています。求人票の住所を見て「どのあたりか」をつかんでおくと、引越し先を決めるときに役立ちます。
市北部・奥田エリア
三菱電機稲沢ビルシステム製作所がある地区です。国道155号沿いに工場・物流施設が並んでいます。大規模な施設が多いエリアなので、正社員・派遣問わず求人数も比較的多いです。
「大手の製造ラインで働きたい」「製造業のスキルをちゃんと積みたい」という人はここから調べると選択肢が出てきやすいです。
市南部・大里エリア
豊田合成稲沢工場など、自動車部品系の工場が集まっています。国道22号(名岐バイパス)沿いの工場も多く、車通勤が前提の職場がほとんどです。社宅・寮完備の求人があれば、引越しコストを抑えたまま入社できます。給与だけでなく住居の条件も、求人票の待遇欄でセット確認しましょう。
市中心部(稲沢駅・国府宮駅周辺)
駅周辺はスーパー・飲食店・医療施設が揃う生活エリアです。名鉄の急行・準急が停まるので、名古屋・一宮方面への通勤も電車で完結します。稲沢市に住むなら、まず駅周辺を中心に住居を探すのが現実的です。
稲沢市で製造業の仕事を選ぶポイント
同じ製造業でも、業種と勤務形態の組み合わせで仕事の内容はかなり変わります。「なんとなく製造業」で応募するより、先に軸を決めておいたほうが選びやすいです。
業種で選ぶ
エレベーター・産業機器系
三菱電機のような大手では、教育制度や処遇がある程度整っている職場が多いです。生産ラインが大規模な分、役割分担も明確で、工程単位のスキルを積みやすい環境があります。「安定した環境でじっくり技術を身につけたい」という人には合っています。
自動車部品系
2交替・3交替が基本で、夜勤手当がつきます。体は使いますが、その分収入は積み上げやすいです。豊田グループ系の工場は受注が安定している傾向があり、雇用の継続性という点では安心感があります。
食品・電子機器系
日勤のみの求人が多いです。残業も自動車系と比べると少ない職場が多く、「平日の夜や週末をちゃんと使いたい」という人には選びやすい選択肢です。
雇用形態で選ぶ
製造業が初めてなら、まず派遣・パートで現場を経験してから正社員を目指す流れが無難です。多くの企業に正社員登用制度があり、現場の評価がそのままキャリアにつながります。
最初から正社員でという場合も、「未経験歓迎・学歴不問」の求人は多いので、臆せず応募してみてください。
稲沢市の工業部品・金属加工メーカー
稲沢市に本社を置く製造業のうち、工業部品と金属加工を手がける企業を紹介します。鍛造・切削・板金・樹脂と加工の種類が分かれているので、これまでの経験や身につけたい技術に合わせて比べてみてください。
アイコクアルファ株式会社|愛知県稲沢市の精密冷間鍛造メーカー
1943年(昭和18年)8月18日、愛国工業株式会社として資本金18万円で創立しました。1947年に自転車用ペダル・フリーホイールの製造を始め、1959年には本田技研工業へオートバイ用ミッション部品の製造を開始しています。1992年に社名を現在のアイコクアルファ株式会社へ変更しました。資本金12億円、従業員数1,003名です。
事業は4つの事業部に分かれています。CF事業部は精密冷間鍛造で自動車の等速ジョイント部品・トランスミッション部品・パワーステアリング用ピニオンシャフト・サンギアを製造しています。AP事業部は同時5軸マシニングセンタで航空宇宙機体部品やエンジン部品、各種インペラーの切削加工を手がけます。RH事業部は人の手に追従するハンドクレーン「ラクラクハンド」を製造販売しています。MS事業部はCAD/CAMシステム「CATIA」の販売・サポートとNC関連ソフトウェアの開発・販売を担当しています。自動車部品・航空宇宙・自社製品・ソフトウェアと領域が分かれているので、同じ会社のなかでもキャリアの方向をいくつか選べるのが特徴です。海外は1979年にアメリカンアイコク(アメリカ・シカゴ)を、1998年にヨーロピアンアイコクアルファを設立しました。1998年・1999年にはGM(米)から「サプライヤー・オブ・ザ・イヤー」を2年連続で受賞し、2017年には第64回「大河内記念生産賞」を受賞しています。
本社所在地: 愛知県稲沢市祖父江町森上本郷十一、4番地1
主な事業: 精密冷間鍛造、航空宇宙機体・エンジン部品の切削加工、ハンドクレーン「ラクラクハンド」の製造販売、CAD/CAMシステムの販売
公式URL: https://www.aikoku.co.jp/
北川工業株式会社|愛知県稲沢市のEMC対策部品メーカー
1955年8月に名古屋市で「北川ゴム商店」として創業し、1963年(昭和38年)6月12日に北川ゴム工業株式会社として法人化しました。1971年3月に商号を北川工業株式会社へ変更しています。資本金は4億9,000万円です。1996年2月に名古屋証券取引所市場第二部へ株式を上場しました。しかし2019年1月、日東工業株式会社がTOBで株式の50.56%を取得し、同年3月に上場廃止、5月には日東工業の100%子会社となっています。
手がけているのは電磁波環境コンポーネント(EMC対策部品)と精密エンジニアリングコンポーネントの製造・販売です。製品はコンピュータ・OA機器・AV機器・家電製品・自動車・航空機・建築物と幅広い分野で使われています。本社と同じ稲沢市目比町の住所に稲沢工場と名古屋支店を構えるほか、春日井工場・テクノセンター・EMCテクニカルセンター(いずれも愛知県春日井市)、物流センター(愛知県愛西市)、全国8か所の営業拠点を持ちます。ISO9001・ISO14001に加えて自動車業界の品質マネジメント規格IATF16949と、試験所認定のISO/IEC17025も取得しており、品質管理や試験・評価の仕事に関心がある人には見どころのある会社です。
本社所在地: 愛知県稲沢市目比町東折戸695-1
主な事業: 電磁波環境コンポーネント(EMC対策部品)・精密エンジニアリングコンポーネントの製造販売
公式URL: https://www.kitagawa-ind.com/
株式会社アイピー・ファインテック|愛知県稲沢市の自動車部品メーカー
1962年に川上鉄工所として創業し、1972年(昭和47年)5月1日に有限会社稲沢鉄工所を設立したのが始まりです。2006年3月に株式会社プリテックと合併し、現在の株式会社アイピー・ファインテックへ社名を変更しました。資本金2,000万円、従業員数100名です。
公式サイトでは「焼結金属加工のスペシャリスト」を掲げており、会社概要の事業内容は「自動車部品製造(機械加工)」と記載されています。主要取引先は粉末冶金メーカーの株式会社ファインシンターで、トヨタグループ各社がエンドユーザーです。製造した部品は足回り・ステアリング・エンジン・ミッションに組み込まれています。2021年には埼玉県川越市に埼玉川越工場を新設しました。焼結金属を相手にした機械加工は市内でもあまり見かけない領域なので、加工技術の幅を広げたい人には候補になります。
本社所在地: 愛知県稲沢市福島町沼角田1番地21
主な事業: 自動車部品製造(機械加工)
公式URL: https://www.ip-ft.co.jp/
稲沢工業株式会社|愛知県稲沢市の精密板金・製缶メーカー
1970年5月に創業した、精密板金と製缶の会社です。資本金2,000万円、従業員数46名(2026年5月現在)と、本記事で紹介するなかでは小回りの利く規模です。2002年8月に橋本知保氏が代表取締役に就任し、経営の世代交代を済ませています。
事業内容は精密板金、製缶、各種鋼板(SUSメッキ鋼板含む)・型鋼・パイプを使用した製品の製造です。敷地面積は6,241㎡です。1980年6月に板金工場を増築、2005年8月に機械工場を増築し、2023年9月には機械工場を新築しています。設備への投資が続いているのは、板金の技術を長く続けたい人にとって見ておきたいところです。人数が多くないぶん、工程を細かく分担するというより複数の工程に関わりながら覚えていく働き方になりやすい環境といえます。
本社所在地: 愛知県稲沢市堀之内町白山756
主な事業: 精密板金、製缶、各種鋼板・型鋼・パイプを使用した製品の製造
公式URL: https://www.inazawa-k.co.jp/
株式会社小﨑製作所|愛知県稲沢市の金属精密機械加工メーカー
1961年9月に創業し、1984年2月に株式会社となりました。資本金は1,000万円です。1996年8月に現在地の稲沢市小池へ工場を移転し、2022年5月には隣接地へ新工場を増築しています。2023年10月に小﨑新也氏が代表取締役へ就任しました。
事業内容は金属精密機械加工および製造です。公式サイトでは「横中ぐり盤を活用した異形材の高精度多面加工や大径・深穴加工の技術力には定評があり」と説明されています。対応できるワークサイズは幅2,500mm×高さ1,500mm×奥行1,500mm・重さ2.8t以下と公表されています。大隈豊和・東芝機械・芝浦機械の工作機械やキーエンスの画像寸法測定器WM-3000などを段階的に導入してきました。2019年1月にISO9001:2015認証を取得し、2022年3月には経済産業省の「事業継続力強化計画」の認定を受けています。大きな部品を高い精度で削る仕事なので、機械加工のスキルをまっすぐ積みたい人に向いた職場です。
本社所在地: 愛知県稲沢市小池四丁目166-1
主な事業: 金属精密機械加工および製造(横中ぐり・大物マシニング加工)
公式URL: https://www.kozaki-ss.co.jp/
稲沢市の食品メーカー
稲沢市には、金属加工とは働き方の性格が違う食品メーカーも本社を構えています。日勤中心の職場を探している人は、こちらもあわせて見てみてください。
株式会社オリエンタル|愛知県稲沢市の香辛料・食料品メーカー
1945年(昭和20年)11月に個人創業し、1953年(昭和28年)1月に株式会社となりました。資本金4,875万円、代表者は星野倶廣氏です。営業本部は稲沢市大矢町高松に置かれています。
事業内容は香辛料および食料品の製造販売と清涼飲料水の販売が軸です。そこから飲食店業、酒類の販売、不動産の売買・賃貸・管理・仲介、生命保険の募集に関する業務、損害保険代理店業まで手がける範囲は広がっています。拠点は稲沢市の営業本部と東京支店のほか、台湾に新竹店とパスタ店を構えています。食品の製造は日勤中心の職場が多く、自動車部品系の交替勤務とは生活リズムがかなり変わります。勤務時間を優先して仕事を選びたい人は、こうした食品メーカーから調べてみるのも手です。
本社所在地: 愛知県稲沢市大矢町高松1-1
主な事業: 香辛料・食料品の製造販売、清涼飲料水の販売、飲食店業ほか
公式URL: https://www.oriental-curry.co.jp/
ナカキ食品株式会社|愛知県稲沢市のこんにゃく・ところてんメーカー
1914年(大正3年)10月5日創業と、100年を超える歴史を持つ食品メーカーです。代表取締役社長は中村寿和氏です。2023年12月28日を譲渡実行日として、いなば食品株式会社へ全株式を譲渡したことを公式サイトで公表しています。
製造しているのはこんにゃく製品、ところてん、生菓子、惣菜加工品などです。海外への展開も進めており、2016年に台湾、2020年にシンガポールとマレーシア、2021年にアメリカ、2022年に中国へと輸出先を広げてきました。こんにゃくやところてんは日持ちの管理がそのまま品質に直結する製品なので、衛生管理や品質管理の考え方を身につけられる現場でもあります。長く続いてきた製造の土台に海外向けの動きが乗っている会社なので、食品業界で腰を据えて働きたい人は見ておく価値があります。
本社所在地: 愛知県稲沢市目比町土深38
主な事業: こんにゃく製品・ところてん・生菓子・惣菜加工品の製造販売
公式URL: https://www.nakakifood.com/
精密鍛造・EMC対策部品・板金加工・大物機械加工から食品まで、稲沢市に本社を置く製造業は業種の幅があります。まずは気になる企業の公式サイトで、採用情報を確認してみてください。
エレベーターの街で、業種も働き方も選べる
稲沢市の製造業を一言で言うと「エレベーターの三菱電機がある街だけど、業種はそれだけじゃない」という感じです。自動車部品・電子機器・食品まで業種が分かれており、日勤のみから夜勤手当ありまで勤務スタイルも選べます。
名古屋まで電車で15分の立地と、大手から地元の専門メーカーまで幅広い選択肢があること——この2点が、稲沢市を製造業の求人探しの場所として選ぶ現実的な理由になります。
業種・勤務形態・通勤距離の3点で候補を絞ると、自分の条件に合った仕事が見えてきます。