転職や就職を検討するとき、「名古屋市の平均年収はどのくらいなのか」は誰もが気になる問いです。しかし、求人サイトに掲載される数値は個別の求人条件であり、名古屋市全体の賃金水準を示すものではありません。
この記事では、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」や国税庁「民間給与実態統計調査」などの公的統計をもとに、名古屋市および愛知県の平均年収の実態を整理します。全国平均・東京との比較、業種別・男女別・年齢別の傾向も含め、転職・就職の判断に役立つデータをまとめました。
この記事でわかること
- 愛知県の平均給与は全国でどの位置にあるのか
- 東京との給与差と、生活コストを加味した実質的な差
- 製造業・IT・金融など業種ごとの賃金水準の傾向
- 年齢・雇用形態が年収に与える影響の整理
なお、この記事で示す数値はすべて公的統計に基づく一般的な傾向値です。個人の年収は企業規模・職種・経験年数・雇用形態によって大きく異なります。データはあくまで参考として活用してください。
名古屋市の平均年収:公的統計が示す全体像
名古屋市を含む愛知県の賃金水準は、公的統計において全国平均を上回る「全国上位圏」に位置しています。
国税庁「民間給与実態統計調査(令和5年分)」によると、愛知県の1人あたり平均給与は全国の都道府県別比較において上位グループに入ります。製造業の就業者比率が高い愛知県では、比較的安定した大手メーカーおよびその関連企業に勤める正規雇用者が多いことが、平均値を押し上げる一因となっています。
名古屋市は愛知県内でもサービス業・金融業・情報通信業の集積が進む都市部であり、製造業の多い豊田市・刈谷市とは業種構成が異なります。そのため名古屋市単体の平均年収は、愛知県全体とは異なる特性を持ちます。
ただし、国税庁統計や賃金構造基本統計調査は「都道府県別」で集計されることが多く、名古屋市単体の数値は市区町村レベルでは非公表または限定公表となっています。本記事では愛知県全体のデータを中心に、名古屋市の傾向を読み解きます。
名古屋市 vs 愛知県 vs 全国:エリア別の年収比較
以下のテーブルは、国税庁「民間給与実態統計調査(令和5年分)」および関連公表データをもとに、主要エリアの平均給与水準の傾向をまとめたものです。都市間の生活費の差も踏まえると、額面の差以上に実質的な購買力の違いが生まれます。
| エリア |
平均給与の傾向(全国比較) |
特徴 |
| 東京都 |
全国最高水準 |
金融・IT・商社・メディアなど高給業種の集積。ただし住居費が高い |
| 愛知県(名古屋市含む) |
全国上位圏(おおむね上位5〜10位内) |
製造業(自動車)の賃金水準が高く、正規雇用率も比較的高い。物価・住居費が東京より低い |
| 全国平均 |
基準 |
令和5年分:458万円(国税庁「民間給与実態統計調査」) |
| 大阪府 |
全国中上位 |
商業・サービス業が中心。非正規比率が愛知より高い傾向 |
出典:国税庁「民間給与実態統計調査(令和5年分)」(2024年公表)
愛知県の平均給与は全国上位圏(おおむね上位5〜10位内)に位置することが多く、東京・神奈川などに次ぐ水準です。ただし東京と比べると給与の絶対額では差があります。一方で、住居費・通勤環境を含めた「生活コストに対する給与水準」という観点では、名古屋は東京より有利とも言われます。
名古屋市内でも、中村区・中区などのオフィス集積エリアと、工業地帯に近い港区・南区では就業者の業種構成が異なり、エリアごとの給与水準の傾向は一様ではありません。
業種別に見る名古屋市の年収水準
愛知県・名古屋市の賃金を語るうえで欠かせないのが業種別の違いです。厚生労働省「賃金構造基本統計調査(令和5年)」をもとに、主要業種の賃金水準の傾向を整理します。
| 業種 |
賃金水準の傾向 |
備考 |
| 製造業(輸送用機器・機械) |
全国平均を上回る |
トヨタグループ・自動車部品メーカーの存在が大きい。愛知県は全国でも有数の製造業賃金水準 |
| 金融業・保険業 |
全国平均を上回る |
名古屋に証券取引機能・地域金融機関・保険会社が集積。金融業は賃金水準が高い業種のひとつ |
| 情報通信業 |
全国平均近辺〜やや上 |
DX人材需要の高まりで近年上昇傾向。東京との格差は依然あり |
| 建設業 |
全国平均を上回る |
大型インフラ工事・リニア関連需要で賃金上昇傾向 |
| 卸売業・小売業 |
全国平均近辺 |
非正規比率が高く、業態・規模により差が大きい |
| 医療・福祉 |
全国平均やや下〜近辺 |
公定価格のため地域差は小さい。処遇改善加算の動向が影響 |
| 飲食・宿泊業 |
全国でも低水準 |
非正規・パートタイム比率が高く平均値を下げる |
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査(令和5年)」(2024年公表)
製造業・金融業・建設業は愛知県内で特に高い賃金水準を示す業種です。一方で小売・飲食・福祉は全国と大きく変わらず、業種選択が年収に与える影響は大きいと言えます。
転職を検討している方がこのデータを活用するヒントとして、「現在の業種と希望する業種の賃金水準の差」を公的統計で確認しておくことを推奨します。同じ職種名でも、在籍する業種・企業規模によって年収は大きく異なります。
名古屋市の製造業で働く場合の企業の特徴については、名古屋市の製造業で働く|区ごとに違う企業の特徴と選び方も参考にしてください。
男女別・年齢別で見る年収の傾向
年収は性別・年齢によっても大きく異なります。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の全国・愛知県データをもとに傾向を整理します。
男女別の賃金差
男性の賃金傾向
愛知県の男性の賃金は全国平均を上回る傾向があります。製造業の大手・中堅企業に正規雇用される比率が高く、長期勤続・定期昇給の制度が整った企業が多いことが背景にあります。(出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査(令和5年)」)
女性の賃金傾向
愛知県の女性の賃金は全国平均と同程度か若干上回る水準です。ただし、パートタイム・非正規雇用の比率が影響するため、フルタイム正規と非正規では大きな差があります。(出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査(令和5年)」)
男女間賃金格差
愛知県は全国と同様に男女間の賃金格差が存在します。製造業の現場職では男性比率が高く、管理職・専門職への女性登用比率の差が格差に影響しています。近年は男女賃金差異の情報開示が義務化され、改善を進める企業が増えています。
年齢別の賃金カーブ
一般的に、愛知県内の正規雇用者の賃金は年功序列的な上昇カーブを描く傾向があります。特に製造業の大手企業では以下の傾向が見られます。
| 年齢層 |
賃金傾向(正規雇用) |
| 20代前半(入職期) |
全国平均近辺。初任給は製造業大手で高め |
| 20代後半〜30代 |
経験・職種により差が広がる。昇格・専門職化で大きく上昇するケースも |
| 40代〜50代前半 |
管理職・専門職は賃金ピーク。非正規・中小企業は上昇幅が小さい |
| 55歳以降 |
役職定年・再雇用制度の影響で賃金が下がるケースがある |
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査(令和5年)」の傾向に基づく整理
名古屋の年収が「実質的に高い」理由
東京と比較した場合、給与の絶対額では名古屋・愛知は低くなります。しかし、転職の判断において「額面の高さ」だけでなく「生活コストと手取りのバランス」で考えると、評価は変わってきます。「可処分所得の観点」では名古屋の競争力は高いと言われており、以下にその理由を整理します。
住居費が相対的に低い
名古屋市中心部でも東京23区と比べて家賃水準は低く、手取りに対する住居費の比率を抑えやすい状況にあります。同じ給与でも手元に残る金額の差が生まれます。
通勤距離・時間のゆとり
名古屋圏は自動車通勤が多く、比較的短時間で通勤できるエリアにマイホームを持てる点も実質的な生活水準に影響します。時間的コストが低いことは生活の質に直結します。
製造業の安定的な雇用基盤
大手自動車メーカーとその関連企業は長期雇用・正規雇用を維持する傾向があり、キャリア全体を通じた収入の安定性という点で名古屋・愛知は強みを持ちます。
近年の賃上げトレンド
2023〜2024年にかけて、トヨタ自動車を筆頭に愛知県内の大手製造業を中心に大幅な賃上げが実施されました。これに連動してサプライチェーン全体での賃金底上げも進んでいます。
愛知県内で年収水準の高い企業を見極めるための基準については、愛知県の優良企業・ホワイト企業の見極め方|転職・就職で後悔しない4つの条件も参考にしてください。
よくある質問
Q1
名古屋市の平均年収はいくらですか? 国税庁「民間給与実態統計調査(令和5年分)」によると、愛知県全体の平均給与は全国上位圏(おおむね上位5〜10位内)に位置します。市区町村単位での名古屋市の平均年収は国の統計では公表されていませんが、愛知県全体の傾向を大きく外れるものではないとされています。全国平均(令和5年:458万円)と比較すると、愛知県は若干上回る水準にあります。
Q2
名古屋と東京では年収にどのくらい差がありますか? 国税庁統計では東京都が全国最高水準を示しています。給与の絶対額では東京が愛知を大きく上回りますが、住居費・生活費を含めた実質的な生活水準で比べると差は縮小します。「額面での比較」だけでなく「手取りと生活コストのバランス」で判断することが重要です。
Q3
愛知県内で年収が高い業種はどこですか? 厚生労働省「賃金構造基本統計調査(令和5年)」によると、製造業(特に輸送用機器・自動車関連)、金融・保険業、建設業が愛知県内では比較的高い賃金水準を示す傾向にあります。一方、飲食・宿泊業や一部の小売業は全国平均と同程度またはそれ以下になるケースが多いです。
Q4
転職で年収を上げるには何を見ればよいですか? 業種・企業規模・雇用形態の3点が特に重要です。同じ職種でも、大手製造業と中小サービス業では賃金差が大きくなります。賃上げ実績・男女賃金差異(情報開示義務化で確認可能)・正規雇用比率などを確認することで、企業の賃金水準の傾向を見極める材料になります。
Q5
非正規雇用と正規雇用の年収差はどのくらいですか? 厚生労働省のデータによると、非正規雇用者の賃金は正規雇用者と比べて一般的に大きな差があります。愛知県でも同様の傾向が見られ、正規・非正規の選択が長期的な年収水準に大きな影響を与えます。転職の際には雇用形態と将来の正規転換の可否も含めて検討することを推奨します。
Q6
名古屋市でIT・情報通信の仕事をすると年収はどうなりますか? 情報通信業の賃金は愛知県でも近年上昇傾向にあります。東京との格差はあるものの、IT人材不足を背景に採用競争が激化しており、特にDX・クラウド・セキュリティなどの専門スキルを持つ人材は全国水準に近い待遇を提示する企業も増えています。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」でも情報通信業は全産業の中で上位に位置する傾向があります。
Q7
名古屋市の年収は全国ランキングで何位ですか? 市区町村単位での「年収ランキング」は公的統計では公表されていません。都道府県単位では、国税庁「民間給与実態統計調査(令和5年分)」において愛知県は全国上位圏(おおむね上位5〜10位内)に位置します。なお、自治体公表の統計でも名古屋市単体の平均年収は公式に明示されていないため、「愛知県全体のデータ」が最も信頼できる公的参照値です。
名古屋市の年収は「製造業×都市集積」で全国上位圏
公的統計をもとに、名古屋市・愛知県の平均年収について整理してきました。ポイントを4点に絞ってまとめます。
愛知県は全国上位圏の賃金水準
国税庁「民間給与実態統計調査(令和5年分)」では、愛知県は全国上位圏(おおむね上位5〜10位内)に位置します。製造業の正規雇用比率の高さが水準を支えています。
業種による差が大きい
製造業・金融・建設は高水準、飲食・宿泊・一部小売は全国並みかそれ以下。業種の選択が年収水準に直結します。
「実質的な豊かさ」では東京に近い
給与額では東京に劣るものの、住居費・通勤コストを踏まえた可処分所得の観点では名古屋は競争力があります。
賃上げトレンドが継続中
2023〜2024年に大手製造業を中心に大幅な賃上げが実施され、愛知県全体の賃金底上げが進んでいます。今後の動向も注目されます。
転職や就職を検討する際は、業種・企業規模・雇用形態を軸に、自分の希望する職種における賃金水準を公的統計や企業の開示情報で確認することをおすすめします。「名古屋は稼げるのか」という問いに対する答えは、どの業種・どの企業で働くかによって大きく変わります。データを参考にしつつ、自分のキャリア像に合った選択を見つけてください。
本記事の数値は公的統計(国税庁「民間給与実態統計調査(令和5年分)」、厚生労働省「賃金構造基本統計調査(令和5年)」)に基づく傾向値です。個人の年収は企業・職種・経験・雇用形態により異なります。