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愛知の製造業の人手不足|数字で見る現状と現実的な打ち手

愛知の製造業の人手不足|数字で見る現状と現実的な打ち手

愛知の製造業では、求人を出しても応募が来ない、採用できても数年で辞めてしまうという悩みを抱える企業が少なくありません。ただ、その苦戦が自社だけの問題なのか、地域や業界全体の流れなのかを、数字で確かめた方は多くないかもしれません。

この記事では、公的な統計をもとに、有効求人倍率、人手不足感の指標、年齢構成を順に確認します。そのうえで、採用に苦戦する企業の傾向を整理し、待遇・対象拡大・認知の獲得という3つの打ち手を考えます。読み終えたとき、自社の数字を何と見比べればよいか、そして何から着手するかを判断できることを目指します。

数字を読むうえでの注意が一つあります。調査ごとに対象(全国か愛知県か)、時点、集計区分が違うため、本文では調査名と公表時点を明記し、出典URLを各節の末尾に載せています。記事は2026年10月26日時点の公表値に基づきます。愛知県の製造業で足りていない人数そのものを示す公的統計はないため、複数の指標から実態に近づいていきます。

愛知の製造業の人手不足|生産工程の有効求人倍率は1.23倍

愛知の製造業の人手不足|生産工程の有効求人倍率は1.23倍

愛知労働局は2026年10月2日に、「県内の雇用失業情勢について(令和8年8月分)」(速報)を公表しました。これによると、愛知県の有効求人倍率(季節調整値)は1.20倍(前月は1.23倍)でした。全国は1.18倍、東海は1.20倍です。原数値では1.17倍で、前年同月より0.06ポイント低くなっています。

製造業の状況を見るには、職種別の数字が役に立ちます。倍率は職種によって大きく違うからです。同じ資料の職業別の有効求人倍率(原数値、パートを含む常用)を見てみましょう。

職業分類 有効求人倍率(原数値)
保安 7.02倍
建設・採掘 5.66倍
介護関連 4.52倍
サービス 2.81倍
輸送・機械運転 2.54倍
販売 2.42倍
専門・技術 1.96倍
生産工程 1.23倍
農林漁業 0.63倍
運搬・清掃等 0.50倍
事務 0.39倍

なお、この表の職業計は1.07倍で、県全体の1.17倍とは集計の対象が異なるため、同じ土俵では比べられません。

製造現場にあたる「生産工程」は1.23倍で、建設・採掘や輸送・機械運転より低い水準です。つまり製造業全体が極端な売り手市場とは言えません。ただし1倍は超えており、求職者1人に対して求人のほうが多い状態です。事務は0.39倍で、求職者のほうが多くなっています。

もう一点、求人そのものが減っていることにも注意が必要です。同月の製造業の新規求人(原数値)は3,920人で、前年同月比8.9%減、輸送用機械器具は18.5%減でした。倍率だけで判断すると、実態を読み違えるおそれがあります。9月分は執筆時点では未公表です。

出典:愛知労働局「県内の雇用失業情勢について(令和8年8月分)」(2026年10月2日公表・速報)

製造業の人手不足感を測る4つの指標

製造業の人手不足感を測る4つの指標

倍率だけを見ると、製造業は極端な売り手市場には映りません。しかし、現場の人手不足感は倍率では測りきれません。愛知県の製造業について不足人数を示した公表値は見当たらないため、性質の違う4つの指標を並べて見ていきます。

労働者過不足判断DI(全国)

厚生労働省「労働経済動向調査」(令和8年8月1日現在、2026年9月29日公表)では、製造業の正社員等は+45、パート等は+14でした。プラスは不足超過を表します。調査産業計は正社員等+47、パート等+26で、製造業の正社員の不足感は全産業と同程度に強い水準です。

未充足求人と欠員率(全国)

厚生労働省「雇用動向調査」(令和7年上半期、6月末時点)では、製造業の未充足求人は154.9千人、欠員率は2.0%(前年同期2.2%)でした。全産業の欠員率は2.6%(同2.9%)で、前年からは低下しています。

中小製造業の従業員過不足DI(全国)

経済産業省「ものづくり白書2026」(2026年5月29日公表)によると、中小企業の製造業の従業員過不足DIは2025年に-17.9でした。出所は中小企業庁「中小企業景況調査」で、マイナスは不足超過です。コロナ禍前の2019年に近い水準とされています。

雇用人員判断DI(全国・全産業)

日本銀行「短観」2026年9月調査(10月1日公表)では、大企業-29、中堅企業-38、中小企業-42でした。企業規模が小さいほど、人手の不足感が強いことがわかります。

どの指標も全国または全産業の値で、愛知県の製造業に限った数字ではありません。ただ、正社員の不足感が強いことと規模の小さい企業ほど不足感が強いことは、複数の調査に共通しています。

参考として、愛知県の製造業の規模も押さえておきます。令和2年国勢調査(愛知県統計課まとめ、2022年5月公表)で、愛知県の製造業就業者は1,028,199人でした。就業者全体の約25.6%(計算値)にあたります。第2次産業就業者の割合は32.4%で、全国5位です。全国の製造業就業者数は、2024年が1,046万人、2025年が1,033万人と、わずかに減っています。

出典:厚生労働省「労働経済動向調査」令和8年8月、厚生労働省「雇用動向調査」令和7年上半期、経済産業省「ものづくり白書2026」概要、日本銀行「短観」2026年9月調査、厚生労働省「ものづくり白書」関連資料、愛知県「令和2年国勢調査」まとめ

年齢構成|高齢化より若年層の入り口の細さ

年齢構成|高齢化より若年層の入り口の細さ

製造業の人手不足は「高齢化が進んでいるから」と語られがちですが、数字を見ると実態は少し違います。

厚生労働省作成のものづくり白書の関連資料によると、全国の製造業で65歳以上が占める割合は8.2%で、全産業の13.8%を下回ります。65歳以上は85万人です。一方、34歳以下の就業者は2025年に258万人で、2002年と比べて減少したあと、近年はほぼ横ばいで推移しています。34歳以下の割合は製造業25.0%、全産業25.4%で、ほぼ同水準です。

ここから見えるのは、高齢者が多すぎるのではなく、若年層の入り口が細いという構図です。若い世代が入らないままベテランが抜けていけば、現場の技能を次の世代に渡すことが課題になります。

この傾向は愛知県でも当てはまる可能性がありますが、愛知県の年齢別割合は今回確認できた資料にありませんでした。自社の地域については、就業構造基本調査などで確認してください。

出典:厚生労働省「ものづくり白書」関連資料

採用に苦戦する企業に見られる5つの傾向

採用に苦戦する企業に見られる5つの傾向

採用が難しい背景には市場全体の事情がありますが、その中でも苦戦する企業には共通する傾向があります。公表されている調査をもとに整理すると、課題は採用の入り口にとどまらず、定着・育成・情報の見せ方に広がっています。

小規模ほど計画どおりに採れていない

ものづくり白書2026の概要では、従業員数が少ない企業ほど「ほぼ計画どおり採用できた」割合が低いとされています。

指導できる人材が足りない

厚生労働省「能力開発基本調査(事業所調査)」(2025年6月、ものづくり白書掲載)によると、製造業の人材育成の問題点で最も高いのは「指導する人材が不足している」の62.8%です。

育てても辞めてしまう

同じ調査で「育成しても辞めてしまう」は54.4%でした。採用だけでなく、入社後に育てて定着させる仕組みが課題になっています。

育成にあてる時間がない

「育成を行う時間がない」は45.4%でした。育成にあてる時間の確保が、現場の課題の一つになっています。

定着率の低さと人手不足は重なっている

中小企業白書2025の分析(第2-1-44図)では、人材が不足していない企業は定着率7割以上の割合が高く、不足している企業は定着率3割未満の割合が高いとされています。

ここで挙げたのは調査にもとづく傾向で、個々の企業の原因を断定するものではありません。ただ、応募が来ないことだけを悩みとせず、辞めない職場にすることと育てる余力をつくることも、採用の悩みとつながっていると考えられます。

出典:厚生労働省「ものづくり白書」関連資料(能力開発基本調査)、経済産業省「ものづくり白書2026」概要

打ち手1:待遇|若手の賃金差を見直す

打ち手1:待遇|若手の賃金差を見直す

ここからは打ち手を3つ見ていきます。入り口の細い若年層に振り向いてもらうため、最初に確認したいのは待遇です。給与を上げればよいという単純な話ではなく、数字で見るとどこに差があるかがわかります。

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和7年、全国、2026年3月24日公表)では、製造業の一般労働者の所定内給与は330.0千円で、産業計の340.6千円より10.6千円低くなっています。年齢別に見ると、差は若い層に表れます。

年齢階級 製造業(千円) 産業計(千円)
20〜24歳 227.1 242.8
25〜29歳 259.3 279.4
30〜34歳 291.2 312.3
55〜59歳 399.2 396.2

20代から30代前半では産業計を下回り、55〜59歳では上回っています。若手ほど、製造業の所定内給与は他産業より低いという傾向で、若年層の入り口が細いことと無関係とは言い切れません。

愛知県では、2026年10月1日から最低賃金が時間額1,195円(従前の1,140円から55円、4.82%の引上げ)になっています。初任給や時給を見直す際は、愛知県の最低賃金1,195円への対応もあわせて確認してください。

賃上げは金額の競争だけではありません。次のような点にも見直す余地があります。

初任給と20代の昇給カーブ

入社時の金額だけでなく、20代のうちにどう上がっていくかを示すことで、先の見通しを立てやすくなります。

手当の見せ方

資格手当や交代勤務の手当など、すでにある制度が求職者に伝わっていないことがあります。総額で何がもらえるのかを明確にします。

長く働ける条件

ものづくり白書で紹介されたJILPT調査では、技能継承の取組として、賃金水準の向上に取り組む割合が71.5%、高年齢従業員の継続勤務が54.8%でした。経験者に長く働いてもらう工夫も、待遇の一部です。

出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和7年、愛知地方最低賃金審議会専門部会資料(2026年8月4日)、厚生労働省「ものづくり白書」関連資料

打ち手2:対象拡大|外国人材・高年齢者・女性

打ち手2:対象拡大|外国人材・高年齢者・女性

二つ目の打ち手は、採用の対象を広げることです。特定の層だけを想定した募集では、応募者の母数が限られます。愛知県の状況を公表値で確認します。

外国人材

愛知労働局の報道資料(2026年1月30日)によると、令和7年10月末時点の愛知県の外国人労働者は249,076人で、前年の229,627人から8.5%増え、全国2位・過去最多でした。うち製造業は96,288人(前年91,571人、5.2%増)で、構成比は38.7%、製造業で外国人を雇用する事業所は6,553所です。

高年齢者

愛知労働局が2025年12月19日に公表した高年齢者雇用状況(令和7年6月1日、21人以上企業14,324社)では、65歳までの雇用確保措置は100.0%、70歳までの就業確保措置は35.5%(全国34.8%)、定年65歳以上は29.0%でした。

女性

令和2年国勢調査(愛知県統計課まとめ)をもとに計算すると、愛知県の製造業就業者に占める女性は約26.7%です。計算値であり、現在の実数とは異なる可能性があります。

未経験者

効果を示す公的な数値は確認できていないため、育成の仕組みと合わせて検討する対象の一つとして挙げておきます。

外国人材については、制度の変更が予定されています。技能実習に代わる育成就労制度が2027年4月1日に施行される予定で、一定期間を経たあとの転籍が可能になるとされています。最新の運用や要件は、出入国在留管理庁や厚生労働省の案内で確認してください。

対象を広げるうえでは、受け入れる側の準備を先に考えることが欠かせません。先に見たとおり、製造業の育成では指導者の不足が最大の悩みでした。作業手順を言葉や図で整理し、教える担当者の役割を決めておけば、年齢や国籍、性別を問わず新しい人が定着しやすくなると考えられます。

出典:愛知労働局報道資料(外国人雇用状況、2026年1月30日)、愛知労働局報道資料(高年齢者雇用状況、2025年12月19日)、愛知県「令和2年国勢調査」まとめ

打ち手3:認知の獲得

打ち手3:認知の獲得

三つ目の打ち手は、自社を知ってもらうことです。ここでいう認知とは、名前が広く知られることよりも、働く側が「どんな仕事で、どんな毎日になるのか」を想像できる状態をつくることを指します。

国内で情報発信や求人票の改善が応募数にどれだけ効くかを数値で示した公的調査は、今回確認した範囲では見つかっていません。「やれば応募が何%増える」とは言えないため、取り組みの方向性だけを整理します。

仕事内容を具体的に書く

扱う製品、1日の流れ、最初の数か月で任される作業を書きます。製造業の仕事は外から見えにくいため、具体的に書くほど判断材料になります。

夜勤や残業の実態を隠さない

交代勤務の有無、月の残業時間の目安、休日の取り方を事実の範囲で示します。入社後のギャップを減らすことは、定着にもつながります。

職場の雰囲気を見せる

現場の写真や社員の声を自社サイトに載せます。働く人の様子が見えると、入社後の毎日を想像しやすくなります。

接点の持ち方を増やす

学校との関係づくり、外国人材が情報を得やすい言語での発信、地域の人が会社を見られる機会など、求人票以外の接点も検討できます。

まず手をつけやすいのは、求人票の見直しです。募集要項が簡素なままだと、仕事の姿が伝わらず、比較の段階で選ばれにくくなるおそれがあります。見直す観点は応募が来ないときに見直す5つのポイントで整理しています。

待遇や育成の仕組みが整っていなければ、認知だけを高めても入社後に離れてしまうおそれがあります。認知は待遇・対象拡大とあわせて進めることで意味を持ちます。

よくある質問

よくある質問

Q1 愛知の製造業は、本当に求人倍率が高いのですか?
A

2026年8月分(原数値)で、生産工程の有効求人倍率は1.23倍でした。建設・採掘(5.66倍)や輸送・機械運転(2.54倍)より低く、製造業の新規求人も前年同月比8.9%減のため、極端な売り手市場とは言えません。

Q2 愛知県の製造業で足りていない人数は何人ですか?
A

愛知県の製造業の不足人数そのものを示した公的統計は見当たりませんでした。全国の過不足判断DIや欠員率、中小製造業の従業員過不足DIなど、複数の指標で不足感をつかむのが現実的です。

Q3 製造業の人手不足は、高齢化が原因ですか?
A

全国では、製造業の65歳以上の割合は8.2%で、全産業の13.8%より低くなっています。34歳以下の就業者が横ばいで推移していることから、課題の中心は高齢化よりも若年層の入り口の細さと考えられます。愛知県の年齢別割合は、就業構造基本調査などで確認してください。

Q4 賃金を上げる余裕がない場合、何から手をつければよいですか?
A

全国の統計では、製造業の所定内給与は20代から30代前半で産業計を下回っています。まずは初任給や昇給の見通し、すでにある手当を求職者に伝わる形で示すことから見直せます。最低賃金の引上げへの対応もあわせて確認してください。

Q5 外国人材の受け入れは、今後どうなりますか?
A

愛知県の外国人労働者は249,076人(令和7年10月末)で、過去最多です。育成就労制度は2027年4月1日の施行が予定されていますが、運用の詳細は変わる可能性があるため、出入国在留管理庁や厚生労働省の案内で確認してください。

Q6 情報発信を増やすと、応募は増えますか?
A

国内で効果を数値で示した公的調査は見つかっていないため、応募が増えるとは言えません。ただ、仕事内容や勤務の実態を具体的に書くことは、入社後のミスマッチを減らす面で意味があります。

愛知の製造業の人手不足|数字で見る現状と現実的な打ち手

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